創業70周年の節目に刻む、木の建築の新たな可能性。仙台・佐元工務店「新社屋」現場見学会レポ
先日、東北工業大学 齋藤隆太郎准教授(DOG一級建築士事務所 主宰)のお招きで宮城県CLT等普及推進協議会が主催する「株式会社佐元工務店 新社屋」の工事現場見学会に参加してきました。
今回の見学会は、設計実務に携わる身として、そして宮城の建築に携わる一人として、非常に刺激的な体験となりました。
1. 「地域とともに歩む」佐元工務店の信念
まず、今回のお施主様であり、施工も自ら手掛けられている佐元工務店さんについて。
1955年の創業以来、佐元工務店さんは「いたずらに規模を追うのではなく、地域のお客様との信頼を何より大切にする」という「拡大より継続」の精神を貫いてこられました。その誠実な家づくりは、仙台市若林区という地に深く根付いています。
創業70周年を迎えられた今、新たに掲げられたブランドミッションが、
「この地に根差し この地を愛し この地で活きる」
伝統を重んじながらも、次の時代を見据えたこの力強い言葉を体現するプロジェクトが、今回見学した仙台市若林区古城(ふるじろ)の新社屋です。
2. 本邦初、「CLT壁勝ち通し壁+軸組み併用構法」の挑戦
今回の新社屋で最も注目すべきは、齋藤先生によると、「本邦初のCLT壁勝ち通し壁+軸組み併用構法(ルート3)」という極めて先進的な構造を採用している点です。
約50㎥ものCLTパネルを構造の核とし、それを軸組みと巧みに組み合わせることで、木造建築の新しい表現の幅を切り拓いています。実際に現場に立つと、CLTの圧倒的な木の質感と、それを支える軸組の軽やかさが絶妙なバランスで共存しており、その迫力に圧倒されました。


3. 設計に込められた「必然的リズム」
齋藤先生のお話の中で特に興味深かったのが、空間を導き出すまでの緻密なスタディプロセスです。
- ZIGZAG(ジグザグ): 動線や視線に心地よいリズムを作り出す。
- TANZAKU(短冊): 空間を機能ごとに丁寧に切り分ける。
この2つが高度に融合することで生まれるのが、齋藤先生の言う「必然的リズム」。
1階は地域に「開かれたエリア」、2階はオフィスとしての「閉じられたエリア」と機能が整理されつつ、CLTの壁面が生み出すリズムによって建物全体がひとつの有機的な空間として繋がっています。

4. 現場で見えた「工務店の底力」
現場の細部を拝見して改めて驚かされたのは、その施工精度の高さです。宮城県産木材の積極的な利用を図り、宮城県内プレカット会社とも連携しながら自社で一貫して管理・実践できる佐元工務店さんだからこそ、この複雑かつ繊細な構造が形になるのだと感じました。

構造体であるはずのCLTがそのまま美しい内装となり、そして五感で木を感じられる空間。まさに、素材を活かしきるプロの技術が詰まっています。
5. おわりに
「拡大より継続」の精神で守り抜いてきた信頼と、「この地に根差し、活きる」という新たな決意。
今回の新社屋は、その両方が見事に結晶化した、地域建築の新しいスタンダードになるのではないでしょうか。
仙台市若林区古城の地に、この「木のリズム」が完成する日が今から待ち遠しくてなりません。様々な工夫や試みをまとめ上げた齋藤先生の設計と、複雑なプロセスをまとめ上げ形にする佐元工務店さんの素晴らしい現場を拝見させていただき、ありがとうございました。
【株式会社 佐元工務店 新社屋】
所在地:宮城県仙台市若林区古城3丁目14-15
公式ホームページ:https://samoto.co.jp/